『ウンジュンとサンヨン』を完走しました。
正直、ひと言では感想を言い表せないドラマでした。
途中、少し見るのがつらくなるほど感情を揺さぶられ、それでも目を逸らせずに最後まで見届けてしまった作品です。
物語全体にずっと切ない空気が流れていて、誰かが明確に悪いわけではないのに、なぜかうまくいかない。
そのもどかしさが胸に残りました。
それにしても、主役の二人の演技は本当に見事でした。
静かなのに、強く心に残る。そんなドラマだったと思います。
個人的には、『愛の不時着』や『トッケビ』以来、嗚咽するほど泣かされた韓国ドラマでした。
ネタバレも含みます!
恨みと憧れが同時に存在する、簡単に割り切れない関係性
このドラマの軸にあるのは、単純な友情ではありません。
長い年月の中で積み重なってしまった、感情の重なりです。
小学生時代、ウンジュンは裕福で才能に恵まれたサンヨンと出会います。
憧れと嫉妬を抱きながらも、気づけばかけがえのない存在になっていく二人の関係は、とてもリアルでした。
好きだからこそ比べてしまい、近いからこそ傷ついてしまう。その感情が成長とともに形を変えながら続いていく様子は、見ていて苦しくもあり、目を離せません。
物語全体を通して感じたのは、「誰も悪くないのに、どうしてもうまくいかない」という切なさです。好きすぎて憎くなる。愛と憎しみが同時に存在する関係を、ここまで丁寧に描いたドラマは珍しいと感じました。パク・ジヒョンの「憧れ」が、二人の関係性に説得力を与えた
本作の感情の揺れがこれほどまでにリアルだったのは、演じた二人の関係性が画面に滲み出ていたからかもしれません。
サンヨン役のパク・ジヒョンさんは、もともと主演のキム・ゴウンさんの熱烈なファンだったそうです。
インタビューでは、「キム・ゴウンという俳優の存在自体が、韓国の芸術界にとっての祝福だ」とまで語っています。
初対面の現場では緊張して話しかけることもできなかったという彼女の純粋な「尊敬」と「緊張」が、そのままサンヨンがウンジュンに向ける複雑な眼差しに重なり、唯一無二の空気感を生み出していました。
キム・ゴウンの演技が「時間そのもの」に見える理由
ウンジュンという人物を見ていて強く感じたのは、「年齢を演じている」というより、「時間を生きているように見える」という点でした。
若い頃のウンジュンは、感情がそのまま表に出て、怒りも喜びも隠しません。
一方で年齢を重ねたウンジュンは、同じ怒りであっても声を荒げることはなく、静かに胸の奥に沈めています。
その変化がとても自然で、30年以上の歳月が無理なくつながって見えました。
若い頃を演じるために、あえて体重を増やして撮影に臨んだというエピソードを知り、外見も含めて「時間」を表現しようとする姿勢に、この役への真摯さを感じました。
『ウンジュンとサンヨン』はどんな人に向いているドラマ?
- 友情の枠に収まらない「複雑な人間関係」を味わいたい人
このドラマは、単なる「仲の良い友達」を描いた物語ではありません。
愛憎が入り混じる関係: 30年という長い歳月の中で積み重なった「憧れ」「嫉妬」「執着」「信頼」といった、一言では言い表せない感情の機微を丁寧に追いたい人に向いています。
リアルな感情: 「好きだからこそ傷つけてしまう」「近い存在だからこそ許せない」といった、人間の多面的な感情に共感したい人におすすめです。
- 「生と死」や「尊厳死」という重いテーマに向き合いたい人
物語の後半、サンヨンが選ぶ「スイスでの最期」は、視聴者に強いメッセージを投げかけます。
人生の締めくくり方: 「自分ならどう死を迎えたいか」「大切な人をどう見送るか」という、哲学的な問いをじっくり考えたい人。
- 派手な展開よりも「静かな余韻」を大切にしたい人
本作は、言葉で全てを説明するのではなく、役者の佇まいや「間」で感情を伝える演出が特徴です。
このドラマは、誰にでも気軽におすすめできる作品ではありません。
人間関係の割り切れなさや、好きだからこそ苦しくなる感情に向き合える人には、深く刺さると思います。
また、はっきりした正解や結論を求めず、見終わったあとも余韻や違和感を抱え続けられる人向けの作品です。
一方で、テンポの良さや分かりやすい感動を求めている人には、少し重たく感じるかもしれません。
本作は、言葉で全てを説明するのではなく、役者の佇まいや「間」で感情を伝える演出が特徴です。
派手な展開は少なく、演技や空気感で感情を伝えるドラマだからこそ、合う・合わないははっきり分かれると思います。
真面目すぎるウンジュンと、素直になれなすぎるサンヨン
ここからはネタバレを含みます。
正直に言うと、私はサンヨンに何度も腹が立ちました。
どんな理由があろうと、あそこまでされたら自分だったら許せない。
そう思う場面も多かったです。
一方で、真面目で良い人すぎるウンジュンにも、別の意味で苛立ちを覚えました。
なぜそこまで耐えられるのか。
なぜ最後まで振り回され続けても側にいることを選べるのか。
その強さが理解できず、同時に圧倒されもしました。
サンヨンが素直になれずにもどかしかった反面、ウンジュンのどこまでも正直な生き方が、より切なさを際立たせていたように思います。
それでもサンヨンを嫌いになれなかった理由
サンヨンに腹が立ちながらも、なぜかサンヨンの立場で考えてしまい、何度も泣かされました。
クズな父親、兄と母の死、何年も片思いを続けても想ってもらえない恋。
サンヨンの人生は、本当に楽しかったのだろうかと、ふと考えてしまいます。
誰にも弱さを見せられず、素直になれずに生きてきた彼女の孤独を思うと、簡単に嫌いにはなれませんでした。
ウンジュンの母に向けて語った
「恨んでない、ただ嫌いなだけ。嫌いな人は頭に残らないけど、憎んでいると残るから辛い」
という言葉は、強く胸に刺さりました。このドラマの感情を象徴するような一言だったと思います。
サンヨンの「身体」に刻まれた追い詰められた人生
サンヨンを演じたパク・ジヒョンの身体表現も、非常に印象に残りました。
かなり痩せて見えたことが気になっていましたが、インタビューで、20代のサンヨンは「痩せているべき人物」だと考えていたこと、体調が悪化した時期には2〜3週間ほどほぼ断食状態だったことを知り、胸が詰まりました。
さらに撮影直前には、意図的にたくさん泣き、むくんだ状態で現場に入ったとも語っています。
きれいに見せるためではなく、サンヨンという人物の不安定さや追い詰められた状態を、身体そのものに刻み込もうとした覚悟が伝わってきました。
画面に映るサンヨンの細さや危うさは、演出ではなく、役を生きようとした結果だったのだと思います。
キム・ゴヌ演じるサンハク
キム・ゴヌさん演じるサンハクの存在も、この物語の中で大きな意味を持っていました。
『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』での強烈な悪役の印象が強かっただけに、誠実で心優しいサンハクとのギャップは衝撃的でした。
二人の女性の間で揺れながらも、誰かを踏みにじることのない姿は、この物語の中で数少ない“救い”だったように思います。
もしこの物語に続きがあるなら、ウンジュンと再び人生を歩む姿を見てみたい。そう思わせてくれる人物でした。
尊厳死という選択が突きつける問い
物語後半、サンヨンが尊厳死を選ぶ展開は、やはりずるいと感じてしまいました。
死を持ち出されると、感情の逃げ場がなくなってしまいます。
スイスでの安楽死という結末を見て、『世界一キライなあなたに』を思い出しました。
似た設定でありながら、このドラマではより生々しく、人間関係の痛みが前面に出ていました。
家族ではなくウンジュンを同行者に選んだ理由も、愛情と執着、信頼と残酷さが入り混じったものだったと思います。
その選択を簡単に肯定も否定もできず、見終えたあとも考え続けてしまいました。
まとめ
『ウンジュンとサンヨン』は、単なる友情ドラマではありません。
長い時間の中で言葉にできなかった感情や、人生の終わりを前にした人間の本音を、静かに、そして容赦なく映し出す作品です。
分かりやすい答えは何一つ用意されていませんが、それでも感情だけは確実に残ります。

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